特定非営利法人生と死を考える会の概要。身近な人を失った悲しみを分かち合い、いのちについて考え行動する開かれた場になる事を目指しています。

ご挨拶

ご挨拶

2023年を迎えて

代表理事 藤井 忠幸

 

新しい年を迎えて

新しい年を迎えております。
あらためて、みなさまのご健勝を心よりお祈り申し上げます。
昨年はコロナまん延に伴い、社会的にもさまざまな分野における支障が漂っておりました。本年はできることであれば、その霧が一掃されることを心より願う次第です。
私どもの活動も、このような社会状況の渦中にて、本年も活動を開始しております。


生を輝かせてくれる死

 「死」という現実は、元々、時を選ばず万人に等しく侵入してきます。手加減されることもなく襲ってきて、人間は死ぬべき存在であることを諭してくれます。
そのような宿命のなかで生きて行かざるをえない私どもにとって、生きること、死ぬことをどのように受け入れ、向き合っていくかを、本年も真摯に交流、分かち合って行きたいと願っております。
そしてまた、「死」は決してネガティブな存在ではなく、「生」をより輝かせてくれる役割を担っていることを、再確認し合うことも大事であると思われます。
仮にもし、死と向き合うことなく、生のみにて生きて行く存在であるとしたら、人の生は貧弱で、薄っぺらいものに陥ってしまうことでしょう。死が存在することにより、生が存在するという大原則を、私どもは忘れてはならないと言えましょう。


「死」の秘める三つの要素

その具体的な活動形態としては、自身にとって大事な人との死別悲嘆等を共有し合う「分かち合いの会」。死別悲嘆を抱えつつも、その後生きて行く際のあり方等を確認し合う「ひまわりの会」。また死生観について学び合う「教養講座」などが定期的に実施されております。
ただし、この二年間くらいは、コロナ禍によりその活動の多くを一部休止せざるを得なかった状態でした。しかし、最近ではその活動も徐々に従来の形態に向けて再開し始めてきております。
その語り合い、共有し合う活動は、幾つかのグループに分けられて実施されております。たとえば、子供を亡くされた親の立場、また逆に親を喪失された子供の立場、身近なさまざまな親族等と死別された立場など、出来るだけ共感し易い遺族同士のグループ分けが実施されております。


つらい悲嘆感情を抱えつつ生きて行く

大事な人と二度とこの世では会えない辛さ、悲しみを抱えつつ、その後生きて行くことは厳しく困難な旅路となりましょう。今までの安定した暮らしぶりは崩れ、心細い不安定な道が前途には待ち構えております。その道を不安に揺られながら歩んで行くことは、遺族たちにとって困難を極めることに遭遇してしまうことも多くあります。
また必要以上に気を張って生きて行く日々の無理が、心身に深い疲労感を溜めていくこともありましょう。何時、自身が倒れてしまうかの不安定な気持ちに揺らぎ続けることも多くありましょう。
そのような困難に陥って行く道すがら、その重荷を抱えつつ前に向かい歩いて行くには、どのような生き方が求められるのでしょうか。


遺族たちにとっての安心、安全な場

世間で遺族たちが、自身の辛い悲嘆感情をそのまま言葉にすると、返ってくる不適切な励ましや慰めの言葉、態度などによって、しばしば大きく傷つけられてしまうことが多いのです。
ですから、私どものグループのような安心な場が、遺族たちにとっての大事な居場所となりましょう。死別悲嘆を語る場合、身内などのプライバシーに触れる語りがどうしても避けては通れません。遺族たちは他の場所の語りでしばしば、傷つけられていることが多いので、悲嘆感情に伴う語りを口にする際、用心深くなり、本音を出し難くなっております。
そのような遺族たちが安心して気持ちを語り、受け止め合える場づくりを、私どもの活動の基本原則としております。


悲嘆を抱えつつ生きて行くために

大切な人との死別を体験した遺族たちの苦しみや悲しみの感情は、時間の経過と共に少しずつ
落ち着き、安定して行くことが多くみられます。しかし、死別悲嘆の感情そのものはまったく無くなり、消えていくことはあり得ません。
無理に無かったことにしようという頑張りは、悲嘆を心身の奥に閉じ込め、その後の心身の不調の源をつくり出してしまいます。それはさまざまな症状と化し、遺族を苦しませ続けることになります。
ですから、悲嘆感情を抑え込むのではなく、それは表出していくことが大事となります。
無くすのではなく、それを抱えつつ生きて行く力を養っていくことが肝要です。そのためには、悲嘆感情そのものを安心して表出し、支え合える環境づくりが必要となります。しかし、そのような場づくりは容易なことではありません。

本年もそのような場づくりを大事にし合いつつ、生のさまざまな分野と意味について、共に分かち合い、活動し合って行きたいと願っております。
そのように本会の活動を展開し合って行くこと通じて、より生き生きとした活動を互いに拓き合って行こうではありませんか。


(2023/1/31)